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コラム【保存版】改修工事と修繕工事の違い|“やる/今はやらない”判断基準と優先順位

修繕の会社を営みながら、自らも物件を持ち、実際に身銭を切って悩んできたミツケンの代表が、大家さんの心に一番近い場所から「後悔しない工事の判断基準」についてお話しします。

この記事を監修したのは…
株式会社ミツケン 取締役 谷村 充功(たにむら みつのり)
防水工事の職人として創業し、現在は大阪市を中心にマンションの大規模修繕工事や防水工事を手がける株式会社ミツケン代表。
2020年より自らも不動産を保有・運用し、修繕の専門知識とオーナー目線を活かした提案を行っています。

  

  

「ならんと、わからん」 僕が大家になった理由

僕は大規模修繕の会社を経営していますが、数年前から自分でも物件を持つ「一大家」になりました。

  

なぜ、大家になったのか。

  

それは、創業以来ずっと感じていた「ギャップ」を解消したかったからです。
大家になる前の現場ではこんなことがよく起きていました。

  

  • こちらは良かれと思って提案しているのに、大家さんが納得しきれない
  • 大家さんの要望を聞いて、こちらが「それは危ない」と感じる

  

お互いに間違ったことは言っていないのですが、どこかギャップがあり、噛み合わない部分があるな…と感じていました。

  

「大家にならないと、これは一生わからない」

  

考えても埋まらないなら、やってみよう。そんなノリに近かったかもしれません。
実際に大家になって、自分のお金が通帳からドンと減るショックを体感して、初めてハッとしました。

  

「お金が減るのって、こんなに嫌なもんなんや。今まで俺、こんな嫌なことを『やったほうがええで』って平気で勧めてたんか…」と。
プロとして、ベストな提案をしていたつもりでしたが、いま考えると当時は、本当の意味での大家さんの心に寄り添った提案にはなってなかったような気がします

  

  

「大家=お金持ち」という誤解と、シビアな現実

世間一般では、「大家さん=不労所得でお金持ち」というイメージがあるかもしれません。
富裕層が、さらに資産を増やすための「余裕のある投資」だと思われがちです。

  

でも、実際にやってみて分かったのは「大家さんは、実はお金がない」という切実な現実。

  

物件を買う時に大きな先行投資をしているから、手元に潤沢なキャッシュがあるわけではない。
日々の家賃収入の中から、なんとか修繕費を捻出しているのが、多くの方のリアルです。

  

だからこそ、大家さんはものすごくシビアになります。できるだけやりたくないし、とりあえず止めて粘りたい。
それが本音であって、僕自身も同じ気持ちです。

  

そんな時「その工事、今すぐやらなくても大丈夫ですよ」と言ってくれる人がいたら、どうでしょう。

  

すごく安心しませんか?

  

「今すぐやらなくてもいい工事」と「今すぐにやった方がいい工事」を見分ける。
そして、やらなくてもいいことは「やらない」という選択を一緒に取る。

  

それが、修繕屋であり、同時に大家でもある僕自身の強みだと思っています。

  

  

  

「修繕」と「改修」 言葉の違いより大事なこと

「修繕」と「改修」似たような言葉ですが、実はこの2つは役割がまったく違います
おそらくAIに聞いたら詳しく解説してくれると思いますので、ここは簡潔に。

  

修繕(マイナスをゼロに戻す):壊れた箇所を直す、現状を維持する行為
例:ひび割れ、タイルの浮きを直す…など

  

  

  

改修(ゼロをプラスにする):今よりも建物の価値を上げる「バリューアップ」
例:外壁の色を変える、既存の塗料よりグレードをあげる…など

  

ただし、多くの大家さんが本当に悩んでいるのは「この工事は修繕なのか、改修なのか」という区別ではありません。

  

「そもそも何のためにこの工事をするのか」が曖昧なまま判断しようとしていることなんです。

  

「安く済ませたい、損したくない」その気持ちが先行して、修繕の本質(建物を守る)も、改修の本質(価値を上げる)も見失ってしまうと、結果的に物件の寿命を縮めたり、入居者が来なくなったりして本末転倒になります。

  

  

「服の破れ」と「体の怪我」 工事の優先順位を考える

僕がよく使う例え話があります。

  

「仕上げ材(塗装や見た目)は、服のようなもの。構造体(躯体)は、体そのものです」

  

仮に「モテたい」というのがゴールだったとします。
そのときに、服がちょっとダサいのと、体調が悪そうなのと、どっちが致命的でしょうか。

  

  

  

服がダサくても破けていても、命に別状はありません。
でも、体調が悪かったり怪我をしていて、悪化しそうならどうでしょう。
まずは、休んで手当てをしますよね。

  

工事も同じです。見た目が悪いだけなら、一旦様子を見るという判断もできます。
でも、躯体にダメージがあるなら、早めに手をつけないと取り返しがつかなくなります。

  

服を直したことによって改善する課題がなければ、応急処置で様子を見たらいい。
それを放っといても安全が担保され、構造体に何もダメージを与えないような問題だったら、先延ばしもできるんです。

  

  

工事別・判断のポイント

  

■外壁補修と塗装

  

補修は基本的には修繕です。一方で塗装は、目的によって判断が分かれます。

  

単に元の色を保つだけなら「修繕」ですが、長期保有を見据えて「スペックの高い塗料」を塗る、あるいは見た目を変えて入居率を上げるなら、それは将来への「投資(改修)」になります。

  

足場という「高い買い物」

  

大規模修繕で一番お金がかかるのが「足場」です。工事をするために必要なものなので、バラせば何も残りません。

  

  

だからこそ、足場がある時にしかできない工事は、予算が許すなら一気にやってしまうのが長期的なコストカットになります
足場を組む回数を減らすことこそが、数十年単位での収益最大化のカギです。

  

ただし、予算がなければ、足場がかかっている部分だけでもやっておく、という判断もあります。
全部やるか、やらないか、の二択ではありません。
その時に解決しておかないといけないクリティカルな課題があるかどうかで判断します。

  

  

タイル剥落は「命」の問題

  

外壁タイルの浮きや剥がれは、見栄えの問題だけではありません。

  

万が一、タイルが落下して通行人に怪我をさせた場合、その責任はすべて「持ち主(大家)」にあります。
法律では、その大家さんのタイルで怪我した人がいたら、持ち主の責任なんです。

  

これは予算がある・ない以前の、法的・道義的な死守ラインです
怪我させたら、その時にめちゃくちゃ費用かかるわけですから、だったら直さないとって話ですよね。

  

❌ 「予算がないから来年で…」
「今すぐやる。生活・命には予算の優先順位なし」

  

  

命に関わる部分は、迷わず手をつける。それ以外の、例えば人通りのないところに貼ってるタイルがポロって落ちても誰も怪我しないようなところだったら、ちょっとお金貯まるまでほっといたらって言えるわけです。見た目は悪いけど、別に大丈夫でしょ、と。

  

外壁に関わらず、水漏れなどもすぐに止めないと生活にも建物にも大きな影響がでてしまうので応急処置・治療はしっかり行います。

  

■屋上防水

  

屋上防水は、基本的には建物を守るための「修繕」です

  

ただし、単に漏水を止めるだけでなく、その上に長尺シートを貼ったり、ウッドデッキを作ったりして、住民の憩いの場にするなら
それは立派な「改修(バリューアップ)」になります。

  

写真は一例です

  

改修よって家賃が上げられるか、入居率が改善するかという「リターン」があるなら投資すればいいし、リターンがなければ修繕に留めておけばいい。

  

お金の使い方には3つあります。浪費、消費、投資
あれこれ目的なく工事をしてしまうのは「浪費」修繕は「消費」、改修は「投資」です。
この違いを意識するだけで、判断がブレにくくなります。

  

  

  

実例:福島区のタイル張り物件——修繕か、改修か

ある福島区の古い物件で、外壁タイルがポロポロ落ちてくるという相談がありました。

  

  

  

  

  

目視で確認できる部分だけでも、建物の上の方のタイルも剥がれてしまっている状態。

「修繕」として考えるなら、落ちたタイルを元に戻すだけです。
でも、1枚落ちたということは、他にも予備軍がいる可能性が高い。古い建物であれば特に、イタチごっこになるリスクがありました。

  

お客さんもその悩みを持っていたので、僕は「全体を板金で囲って、今後の予防まで一緒にやってしまいませんか?修繕するのと変わらない費用でいけますよ」と提案しました。

  

  

結果、お客様はこの提案を採用し、板金を貼ることで将来のリスクを大幅に減らすことができました。
これは「改修工事」として取り組んだ事例です。

  

  

資金がない時こそ「戦略」を立てる——ミツケンだからできること

「直したいけど、今は手元に資金がない……」
そんな時、ただ放置するのが一番のリスクです。
僕はよく、「工事を点で考えず、ライン(時間軸)で捉えてください」とお話しします。

  

入居率改善と維持修繕を分けて考える

  

たとえば、入居率を上げたいけど予算がない場合。
そのときは、入居率に直結する部分だけを先にやるんです。

  

入居率が改善して収入が増えたら、次に他の部分の修繕を考える。
「お金を生むための工事」と「建物を守るための工事」をごちゃ混ぜにせず、長期的に見て段階的に進めていきましょう、という考え方です。

  

1回きりで終わる修繕屋さんなら「一気にやっちゃいましょうよ」と言うかもしれません。
でも、長く付き合う前提なら、2回に分けてもいい。

  

どういう提案をするかは、 その修繕屋が何を大事にしているかで変わると思っています。

  

  

税務の話は「判断材料の一つ」に過ぎない

  

修繕と改修は、税務の話と一緒に語られることが多いです。
オーナーとしても「損したくない」という気持ちがあるから、なおさら気になりますよね。

  

ただ、この部分はとてもデリケートで、 修繕会社が税務上から見て「これは修繕」「これは改修」と断言できる領域ではありません。
また大家さんが「資産計上したいからこっち」と、都合で選べる話でもない。

  

最終的な判断は、個別の状況を踏まえたうえで、税理士さんの専門領域になります。

  

だから僕が強く伝えたいのは、ひとつだけです。
お金のために、工事の実態をねじ曲げるのは絶対にダメ。

  

お金だけを軸に考え、判断するのは危険です。
ただ一方で、お金の不安を無視することもできません。

  

  

不安は「一人で抱えない」

  

僕が大家として積極的にやっていることは、

  

  • 不安を言葉にして整理する
  • 工事の目的と優先順位を一緒に考える
  • 必要があれば、不動産に強い税理士さんとも連携する

  


ということです。

  

大家さんって、どうしても孤独になりやすい仕事やと思います。
ひとりで判断すること自体が悪いわけではありませんが、頼れる仲間が多い方が、不安は確実に軽くなります。

  

大家が集まるセミナーに参加してみたり、SNSを通じて情報交換してみたり。
小さなことからでいいので、つながりを増やす行動は大切です。

  

実際、オーナー仲間を見ていても、自分でも様々な勉強をしつつ、
お金のことは税理士に、建物のことは修繕のプロに相談する。結局、みんなこの形に落ち着いています。

  

ファイナンスの相談も受けています

  

どうしても「今すぐやらないといけない工事」がある場合、リフォームローンなどのファイナンスを活用する方法もあります。

僕たちミツケンでも、こうした資金計画やローンに関する相談に乗っています。
金利や金額の制限はありますが、選択肢の一つとして提示できるというだけでも、不安はかなり減ります。

代理店のような役割を始めたのは、大家として「お金がない中で、どう判断するか」を実際に悩んできた経験があるからです。

  

  

プロが「やらんでいい」と言ってくれる安心感

プロの視点で「ここは今はやらんでいいですよ」と言ってもらえるだけで、どれだけ心が軽くなるか。

  

僕も大家になって、その「安心」の価値を知りました。

  

大家さんって、本当に不安なんですよね。見えないものに対して、どこまで対処すればいいのか分からないから。
だから、プロが「今はやらなくていい」って言ってくれたら「ああ、よかった」ってほっとするんですよね。

  

僕たちは、すべての工事をやらせる立場ではなく、やらなくていい選択肢も含めて考える“セカンドオピニオン”のような存在でありたいと思っています。

  

  

無理に工事を進めない。でも、放っておくべきでないところは、ちゃんと伝える。
その線引きを一緒に考えることが、修繕屋であり、大家でもある僕の役割だと思っています。

  

  

一人で悩まず、まず「色々な会社」に相談してみてください

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

  

最後にお伝えしたいのは、まず、色々な会社に相談して情報を集めてみてくださいということです。
1社だけに聞くというのもリスクがあるので、いろんな人に聞くことをお勧めします。

  

僕自身、もし自分が相談するとしたら、何社か回った上で「この人に聞いてみたいな」と思った人に相談すると思います。
だから、皆さんにもそうしてほしい。
大家さん同士の紹介・口コミもいいと思います!こういう時、仲間がいると心強いですね。

  

何社か回ってみて、それでも解決しないとき。
あるいは、いろんな情報を収集した中で、どうしてもミツケンが忘れられない、印象に残ったと思ったとき。
「同じ大家として、本音で相談したい」と思ったとき。

  

一人で悩んできた大家さんも、ここからは一緒に考えましょう。
大家仲間として、気軽に相談してもらえたら嬉しいです!

  

  

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プロフィール

谷村充功

八尾市出身、富田林市育ちの1977年2月生まれ。一男二女の大黒柱。
株式会社ミツケンの代表を務め、木造3棟、区分1室の家主としても活動している。
保有資格は、二級建築士、一級施工管理技士、CPM

所属する大家の会:元気が出る大家の会、CGS、PIC、がんばる大家の会、ドリーム家主倶楽部、不動産経営研究会ほか

株式会社ミツケン

大阪と東京を拠点に、マンション・ビルなどの大規模修繕工事・改修工事を手がける専門会社。
建物の調査・診断から、施工、アフターフォローまでを一貫して行っています。

オーナー・管理会社・入居者、それぞれにとって安心できる修繕を目指し、施工会社としての視点に加え、大家さん・CPM(不動産経営管理士)の視点から、本当に必要な工事だけをご提案できることがミツケンの強み。
長年のご縁に支えられ、リピート率は80%超。これからも誠実で正直な姿勢で、大家目線の安心できる修繕を行ってまいります。

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