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ミツケン大家新聞 第3号 クラスコ 小村典弘代表 

ミツケン新聞_クラスコ小村典弘代表&ミツケン谷村充功代表
石川県内の仲介件数11年連続1位を誇り、不動産業界を牽引する存在のクラスコグループ(金沢市)。現在、グループ10社を擁し「DO IDEA」をミッションに、FC運営やシステム開発など、不動産領域を超えたさまざまビジネス展開を図っている。代表の小村典弘氏のこれまでのあゆみや、構想について話を伺った。

2023年12月、創業60年迎える

谷村:本日はお時間を作っていただいてありがとうございます。早速ですが、事業内容や小村社長の構想など色々お聞きしたいと思っています。貴社は創業60周年を迎えられたそうですね。

小村:2023年12月8日で創業60年となりました。祖父が1963年、金沢市で不動産業を始めました。当時はAM・PM業務といった言葉はもちろんなく、管理業務自体が確立されていない時代だったと聞いています。そして82年に父親が2代目に就任し、賃貸管理戸数を増加させたり、マンスリーマンション・コインパークなど新たなサービスを提供したりして事業を拡大していきました。私は99年、入社し、2014年、私が3代目に就任しました。60周年を迎えることができたのも、オーナーやスタッフ、同業者の皆様などの支えがあってこそだと実感しています。

谷村:入社されてから約四半世紀経つわけですね。さまざまなサービスを展開されていますが、何かきっかけがあったのですか。

金沢市内にあるクラスコ本社。60周年を記念したグッズがたくさん置かれていた

全米不動産管理協会に出会い社内体制見直し~古参者ら8割が退職~

小村:私が入社したころ、平成不況が長らく続いていて先行きが不安でした。そんな中、海外での不動産業について調べると、アメリカでは不動産業は、医者や弁護士と並んで社会的地位が高いことを知りました。同時に、米国の協会IREM(全米不動産管理協会)に出会ったことが一番の契機かもしれません。「不動産管理が倫理をはじめに、賃貸経営に欠かせない知識を身に付け、オーナーの不動産価値の最大化をもたらす」という考えに感動しました。そこで、まず社内の改革が必要だと感じ、ITツールを用いた業務効率化を行いました。

谷村:私もCPMの勉強をしたことで、オーナーの利益最大化が一番大事であることを改めて感じることができました。当社は大規模修繕工事を主としていますが、まず始めにお客さんに「工事をする目的は何か」をおたずねしています。その人の利益の最大化が目的なので、工事をしないという選択肢もあり得るからです。小村さんは事業承継されていますが、体制の見直しを図ると社内から不満の声が上がったのは。

小村:不動産業界自体、当時はアナログで、当社ももちろんのこと、FAX・郵送・電話をフルに活用して手作業で業務することが当たり前でした。これらを改めるとともに、「デザイン経営」を取り入れることにしました。おっしゃるとおり、従来のやり方に固執する社員も多く、私が社長に就任してから3年間で、ベテランを中心に8割が退職しました。実務的、精神的にも大変でしたが、少数陣営がゆえに、柔軟で迅速に改革を進めることができました。

谷村:組織変革を行った際、退職が相次ぐことは健全に発展していく過程でもあるという考えもありますが、一緒に働いていたメンバーが大量に去ってしまうことは厳しい状況だったと思います。しかし、思い切ってIT化したことや、デザイン経営を導入されたことが今の貴社を形作ってきたのでしょうね。

ホテルのロビーのような会議室

リノベブランド生み出し同業者などにFC展開

小村:まず、リノベーションブランド「Renotta(リノッタ)」を生み出したことが当社にとって大きな事業機会、成長機会になったと自負しています。サービス誕生の背景には、お預かりしているアパートやマンションの空室率の上昇や家賃の下落にあります。リーマンショックの影響もあり、退去者が増える中、下落が頻発していました。ただ、減額さえすれば入居付けできますが、それでは課題解決になりません。暗中模索し、空室の一部屋一部屋に「姫部屋」などコンセプトを設け、リノベーションしたところ、家賃をアップして入居を決めることができたのです。それを知った同業者からベンチマークされるようになり、2014年、FCの全国展開をスタートしました。

谷村:今でこそ、「リノベ」という言葉が浸透していますが、賃貸物件は原状回復工事が専ら中心で、リノベしようという会社や家主はほとんどいませんでしたね。今でも、壁は全面白色のクロス、床材は白系か茶系といった具合に画一化している物件が多く見受けられます。ところで、「Renotta」はどのようにFC展開されているのですか。

小村:「ポイントリノベ」など3パターンの工事規模を設け、加盟店は、物件のターゲットに合うデザインを380種のバリエーションの中から選択することができます。それに加えて、投資理論に基づいた提案ノウハウ、それをサポートする収支分析システムを提供しています。これをパッケージ化して加盟店に販売する手法を取っています。冒頭で、「オーナーの利益最大化」の話しをしましたが、このサービスで収益改善率が51%、平均33%賃料アップが実現しています。同時にオーナーに提案した不動産会社は、会社の価値向上を図ることができます。

「Renotta(リノッタ」WEBサイト

谷村:なるほど。社内での困りごとを解決するシステムを開発・運用し、実績を得られたものについて、外部に提供する仕組みを取ってるのですね。

小村:このほか、AIを活用して満室経営をご提案する「満室の窓口」のFC化や、物件点検アプリ、社内教育のeラーニングやWEBマニュアルなども同業他社に販売しています。これらが現在、サービスとして提供できているのも、社員が大量に退職したため、入社して間もない社員でも分かる、できる仕組みにする必要があったからなんです。

谷村:社内外の研修や勉強会などで教育しても、実務に関わる「イロハ」など教えるのはなかなか難しいですが、それらを補うという意味でも、eラーニングの開発・導入はスタッフの成長にもつながりますね。業務のマニュアル化は、災害や地震など有事の際にも役に立ちそうですね。

能登半島地震で管理物件900件被害~マニュアル化により迅速に対応~

小村:実際、2024年1月1日に発生した能登半島地震でも大変役に立ちました。管理物件は金沢市や周辺なので、能登に比べて軽微なものでしたが、電気温水器からの水漏れや漏水、ガラスの破損、クロスのひび割れなど被害報告が900件近くありました。トラブル事例をある程度マニュアル化していたので迅速な対応ができたと感じています。マイコンメーターの復旧方法など網羅できていなかった内容については、マニュアルに追記しました。また、入居者に対して軽微な設備の修理について被災者専用の特設ページに記載したり、オーナーには、LINEや動画で情報の提供・共有を行ったりしました。

谷村:スピーディーに対応できる上、入居者やオーナーへの信頼にもつながりますね。マニュアル化、eラーニングはどの業界でも活用できそうですが、建築業では特に生かすことができるように思います。建築業は高齢化・若者離れがつづいており、業界全体の現状や将来を見直す時期にきました。

小村:私も常に「不動産会社の本質とは何か」を考えています。帝国データバンクの発表によると2023年、仲介会社の倒産件数が過去最多を更新したそうです。淘汰が進む中、当社では、「人々が人生を楽しむための新しい道を開く試みを行い、新しい価値を提供し続ける」という取り組みを行い、チャレンジをつづけてミッションである「DO IDEA」を行っていきます。

谷村:枠にとらわれないアイデアで社会に価値を提供することが大事ですね。大変勉強になりました。本日はどうもありがとうございました。

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プロフィール

クラスコ 小村典弘代表

石川県出身。1975年生まれ。
コンサルタント会社での勤務を経て、祖父が創業したタカラ不動産株式会社(現:株式会社クラスコ)に入社。2014年、代表に就任する。
GPP(最上級不動産経営改善士)/CPM(米国不動産経営管理士)/相続アドバイザー/宅地建物取引士/FP技能士/証券外務員/賃貸住宅管理士/少額短期募集人資格/レジデンシャルセキュリティーアドバイザー/投資不動産取引士などさまざまな資格を保有している

ミツケン 谷村充功代表

八尾市出身、富田林市育ちの1977年2月生まれ。一男二女の大黒柱。
株式会社ミツケンの代表を務め、木造3棟、区分1室の家主としても活動している。
保有資格は、二級建築士、一級施工管理技士、CPM、CCIM
所属する大家の会:元気が出る大家の会、CGS、PIC、がんばる大家の会、ドリーム家主倶楽部、不動産経営研究会ほか

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