目次
対談
ミツケン大家新聞 第7号 ファンバウンド 大門 拓童代表
チェックイン事業から一棟貸しへ 参入の原点とは
谷村:本日はお時間をいただき、ありがとうございます。大門さんとは、共通の知り合いが多く、さまざまな家主の会でお会いしていますが、腰を据えてお話しするのは初めてですね。まずは、事業の全体像をあらためて教えてください。
大門:当社は「今昔荘」というブランドで、一棟貸しの高級民泊を開発・運営しています。大阪を中心に16棟を運営しており、すべての物件で独自のコンセプトを設計し、空き家や空きビルをリノベーションして新しい価値を創っています。

谷村: 元々、ホテルや民泊運営に携わっていたのですか。
大門: いえ、大学院卒業後は、東洋エンジニアリングで海外駐在員をしていました。帰国後、父親が経営する大地に入社し、旅行事業部、インバウンド事業部を担当しました。

2016年には大阪・難波で「民泊向けチェックインサービス兼手荷物預かり所」を立ち上げました。この年は団体旅行から個人旅行(FIT)へと移行し、インバウンドが右肩上がりに伸びている時期でもありました。さらに大阪市では、マンションや戸建て住宅などで宿泊営業ができる「特区民泊」制度がスタートし、訪日客と直接向き合う事業を展開したのが原点です。
谷村: あの頃は「爆買い」が象徴的でしたね。なぜ一棟貸しの民泊を始めようと思ったのですか。
富裕層がくつろげる100㎡の高級民泊
大門:民泊向けチェックインサービス兼手荷物預かり所を手掛ける中、家族・親戚と大人数で来ている層が一定数居ることが分かりました。しかし、皆で過ごせる宿泊施設が少ない。そこで富裕層がゆったり過ごせる一棟貸しにニーズがあると捉え、民泊に参入しました。
谷村: どのようなコンセプトでどのような宿泊客をターゲットにされていますか。
大門:「ホテルでも旅館でもない、上質な民泊」をコンセプトに、一棟ごとにテーマを設け、デザイン・設備ともに高いクオリティを追求しています。必要以上のサービスは加えず、100㎡前後の広い空間を提供しています。最大9人で宿泊可能で、訪日客はアメリカ・中国が約60%。国内宿泊者は15%ほど、残りの25%は実に世界各国からです。大阪万博閉幕直前の10月は日本人が多くを占めました。
谷村:一棟でゆっくり過ごせるのは、ホテルとの差別化は十分に図れますね。しかし、近年、一棟貸しの民泊事業を行う事業者やオーナーが増えているため、競合が多いと思います。どのように差別化を図っていますか。
通常掲載できない、「一休.com」「Marriott Bonvoy」にも掲載
大門:大阪の民泊市場は湾岸、中心地、西成と、3つのエリアが併存しています。宿泊者の来日目的が少し異なるため、エリア別のオペレーションの最適化を図っています。また、当社の民泊は、通常掲載できない、「一休.com」「Marriott Bonvoy」といったハイグレードのプラットフォームにも掲載されています。これが大きく、「Airbnb」や「Booking.com」の予約が落ちる閑散期でも、販売チャネルが多様なので高稼働を維持できています。

谷村:民泊は、賃貸経営と異なり、一日単位で価格が変動する点も興味深いですね。賃貸の「月次管理」が、民泊では「日次管理」で必要になるイメージでしょうか。
大門:宿泊業界では、Rev PAR(レグパー:Revenue Per Available Rooms)と呼ばれる、客室売上を客室総数で割った1室当たり売上の指標がよく使われます。賃貸が「家賃 × 入居率」で月次の安定収入を見るのに対し、民泊は「単価 × 稼働率」を日次で積み上げていく事業です。
谷村:スピード感が非常に大事で、運営力が問われるビジネスですね。今のネット時代は口コミ評価も重要ですよね。当社の工事業に置き換えても共通点があります。きれいに施工するのは当たり前なので、満足度は上がりません。減点方式と言われる中で、どれだけ加点を積み重ねられるかが満足度やLTVを高める。工事もまたサービス業である、という感覚は同じですね。
大門:スタッフ対応や清掃といったソフト面が評価のベースになる一方で、集客面では、インパクトのある写真や世界観の見せ方が重要になります。無人運営だからこそ、その中でどう「サービス」と評価してもらうかを常に意識しています。
谷村:ところで大阪市では特区民泊の規制が入り、2026年5月で新規申請が終了します。この影響はありますか。
大門:今回、規制が掛かるのは「特区民泊」です。当社では2018年の建築基準法改正後以降、「旅館業」を取得して営業しています。このため直接の影響は特にありません。むしろ、大規模マンションを活用した民泊や、特区民泊の方法でしか営業できない物件が減るため、競争環境が改善すると見ています。
中国撤退の原体験から多国籍需要を前提に集客
谷村:なるほど。日中関係の悪化で中国発着便が欠航・減便するなどの事態も起きています。実際、ミナミなどの街中でも少し減ったかなという印象はありますが、この影響はありますか。
大門:中国は国内の不満を外にぶつける傾向があり、旅行規制は何度も起きています。父が中国に飲食店を4店舗出した直後に尖閣問題が発生し、暴動で店が破壊され、撤退を余儀なくされた経験もあります。この経験から、多国籍客にリーチできる販路を確保しており、特定国が減っても大きな影響を受けないよう設計しています。
売上連動家賃で投資利回り40%超も
谷村:宿泊者についてはよく理解できました。次に、所有形態や運営スキームを教えてください。
大門:オーナー、投資家を募って運営していますが大きく2タイプあります。
①投資家が家主から賃貸し、当社と業務委託契約を結ぶ方式
②家主=投資家で、当社と業務委託契約を結ぶ方式
売上連動家賃にしており、清掃、宿泊ポータルサイトなどの掲載費、ゲスト対応、広告宣伝費など運営にかかわる一切の業務を請け負い、レポートとして毎月、報告書を提出しています。余談ですが、家具・家電は始めに購入いただき、当社が所有する方式をとっています。ポットやプロジェクターは壊れやすく、買い替え判断をオーナーに都度仰いでいると稼働が止まる可能性があるためです。


谷村:建物は新築・既築は問わないですか。
大門:築古戸建てから、ビル、倉庫まで幅広い物件が対象です。最近では、最初から民泊前提で新築する投資家も増えてきました。高級民泊として作り込むため、内装工事や家具・家電の調達に初期費用として何千万円とかかりますが、1泊単価15万円、投資利回り40%超という実績があります。
初期費用0円で投資可能な融資誕生
谷村:新築なら銀行融資が使えそうですね。
大門:おっしゃるとおり、新築で民泊をする場合、金融機関からプロジェクト融資として上物からフルローンが出やすいですが、既築の場合、融資が降りにくいこともあります。そこで、ブロードエンタープライズ社が新たに提供を始めたファイナンススキームをお薦めすることがあります。これは、金融機関からの融資や、ノンバンクが提供するリフォームローンに代わるスキームで、与信枠を使わず初期費用0円で投資でき、高単価民泊との相性も良く、早期にPLが改善して見えるメリットがあります。
谷村:民泊は賃貸とは投資としての成り立ちそのものが違ってきますね。PLやBSの見え方も大きく変わってくるように感じます。賃貸経営でBS(資産)を固め、民泊投資でPL(収益)を伸ばすイメージですね。
大門:はい。まさにそのイメージです。オーナーにとっても、既存の賃貸収入だけでは取り切れない部分を民泊で上乗せできる選択肢ではないかと考えています。
谷村:民泊運営、経営も奥が深く、実に興味深いです。今後、どのように展開されていく予定ですか。目標などあればお聞かせください。
大門:目標は、「高級民泊といえば今昔荘」と言われる存在になることです。冒頭でお話ししたように、大阪は2016年から特区民泊がスタートするなど、民泊に関して東京より5年先を行くと言われています。この経験・知見を生かして東京や沖縄、北海道など国内の主要エリアにも展開していく予定です。
谷村:賃貸と民泊は同じ不動産でも収益構造が大きく異なり、運営力が価値を左右する点がよく分かり、オーナーの資産価値や満足度をどう高めるかが重要であることは、民泊運営と工事業に共通していると感じました。本日は示唆に富むお話しをありがとうございました。
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プロフィール

ファンバウンド 大門拓童代表
滋賀県野洲市出身。1983年11月17日生まれ。同志社大学大学院を卒業後、東洋エンジニアリングに就職し、アメリカやインドネシアなどの海外駐在員として従事する。退職後、父親が代表を務める大地(滋賀県野洲市)の取締役として旅行事業部、インバウンド事業部の事業部長を務める。2017、ファンバウンドを設立し、代表取締役に就任する。

ミツケン 谷村充功代表
八尾市出身、富田林市育ちの1977年2月生まれ。一男二女の大黒柱。
株式会社ミツケンの代表を務め、木造3棟、区分1室の家主としても活動している。
保有資格は、二級建築士、一級施工管理技士、CPM、CCIM
所属する大家の会:元気が出る大家の会、CGS、PIC、がんばる大家の会、ドリーム家主倶楽部、不動産経営研究会ほか