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ミツケン大家新聞 第1号 元消防士・バーニング大家 谷弦樹オーナー

「バーニング大家」の屋号で活動する、元消防士の谷弦樹オーナー。21年から専業大家となり、350人が所属する「元気が出る大家の会」を主宰している。そんな谷オーナーに、これまでの投資失敗談から現在に至るまでの経緯、賃貸経営のスタイルなどについて話を伺った。

初投資はノールック 購入から半年経っても全空

谷:元々消防士をやっていて、2015年、妻を代表にした法人を立ち上げて不動産賃貸業を開始しました。2021年に退所し、現在専業大家として活動しています。不動産投資を行う前に株式投資をしてみましたが、1か月で200万円を半分以下にしてしまい、色々勉強を始めてみて、不動産投資にたどり着きました。

谷村:消防士など公務員の方は副業できないから、奥さんを代表にするスキームで不動産投資をされていますね。公務員や上場企業の会社員は、属性を生かせるから金融機関が評価してくれるので、融資をしてもらいやすいですしね。

チラシ配り

谷:そうなんです。それに、消防士や警察官は会社員や役所勤めの公務員とちがって、平日休みに物件調べや営業、金融機関に行きやすい環境にあります。そのため、不動産投資は「私のためにある投資だ」と思えたんです。そして見事、1棟目を手に入れることができたんです。私と縁もゆかりもない、横浜市の木造10戸、ほぼ新築の利回り10%のアパートをノールックで購入しました。空室があったら不安でしょうっていうことで、販売会社がサブリース契約にしてくれました。でも、実は全空で、繁忙期なのに1室も埋まらない。ついに、火がついて家具家電付きにしたり、ビラを巻きまくったりしてなんとか入居付けして、売却まで持っていくことができました。

谷村:ノールックで購入されて入居率が0%!?そんな経緯がおありだったんですか。たしかに本を読んだり、セミナーを聴講したりして、頭では理解できても、実際に初めて融資が受けられるとなると飛びついてしまいますよね。私も物件を所有してみて、本や座学では分からない、感情面も左右されることに気が付きました。1棟目は大変だったかと思いますが、「元気が出る大家の会」を主宰されたり、健美家のコラムを書かれたりと大活躍されていますね。現在は消防士を退所されて専業家主として活動されているのですか。

ドミナント戦略に切り替え、200室まで拡大

谷:専業大家として活動するに至った理由は、投資家の方々との接点が増え、皆さんからさまざまなビジョンをお聞きし、自身も盤石な地盤を作ってしっかり事業としてやっていきたいと思ったからです。横浜の物件で苦い経験をしているので、エリアは土地勘のある京都に絞っています。購入する際は、周りの不動産会社さんにヒアリングを行いながら、リーシングのしやすさを重視して、最悪なシナリオを考えるようにしています。現在、ファミリータイプをメインに約11棟、200室ほど所有しています。

谷村:いわゆるドミナント戦略を取られているわけですね。不動産を所有してみて感じたことですが、家賃収入に目が行きがちですが、仲介手数料、広告料、原状回復費用など掛かる費用をどのようにコントロールするかが肝心だと最近感じています。営業利益を大きくすることが大事で、キャッシュフローにも繋がってくるので、それらの販管費を意識しています。加えて、自身の本業である建築業と同じように、P/L(損益計算書)を見がちですが、純資産を意識しないといけないと思います。谷:バランスを考えながら、ポートフォリオを組まないといけないですね。投資は考え方次第なので、利回りが低くても、売却したときに利益が出れば良いという人も居ますし。利益の先取りなのか、繰り延べなのか、どちらを優先するかは、ある程度決めておく必要があるかと感じています。今、家賃収入が1億2000万円ほどで、 24年に2億円にしたいという目標はありますが、結局、生活にどれだけ使っていけるのか、また自身の幸福度を大事にしています。

ファミリーマンションで突如雨漏り発生

雨漏りが発生したいた屋上
雨漏りが発生していた屋上
比較的低コストで施工可能な塩ビシートによる防水(機械的固定工法)を施工
比較的低コストで施工可能な塩ビシートによる防水(機械的固定工法)を施工

谷村:さて、次は工事の話に移っていきたいと思いますが、今回施工させていただいた京都府福知山市の物件は地上7階建ての比較的大きいマンションでしたね。前から保有されていらっしゃったんですか。

谷:マンションはテナント付きのファミリータイプで、21年12月に購入しました。これまでアパートの投資を中心にしていたので、規模がある物件は初めてだったんです。買った当初は特に何も発生してなかったんですが、ポツポツと雨漏りがし始めて。前の所有者に確認すると、「過去に雨漏りはあったが、今は止まっている」と言っていて、入居者にも聞いてみると、「大雨や台風時に、雨が壁からつたってきたことがあるが、1年以上発生していない」とのことでした。築古ですし、大掛かりな工事をしないといけないと思っている中、オーナーのコミュニティで、オーナー兼施工会社のミツケン谷村さんに出会い、相談させてもらいました。

谷村:セカンドオピニオンとしてアドバイスができたら良いなくらいに思っていました。谷さんから「築古ダメですよね」と言われたんですが、現場調査してみると、指摘されている箇所からは水が入らないので、他に要因があると思いました。しかし、修繕する前に「そもそも谷さんはこの物件を長期保有するのか、短期で売却するのか」そこが重要なのでお聞きしました。

谷:現場調査時に谷村さんから質問され、工事会社にこんな家主目線の質問をされたことがなかったので驚きました。「長期保有」と答えると、「大掛かりな工事をしなくてもまだ持ちます。部分手直しが良いのではないか」と言われ度肝を抜かれました。

谷村:工事云々というより、お客さんの「利益最大化」をコンセプトにしています。まず最初に、どのような目的で工事を行うのかをお伺いしています。利益の最大化が目的なので、「工事をしない」という選択肢もあり得ると思っています。今回の建物においては、修繕しないといけないことには変わりはないですが、どのタイミングで、どこまで施工をするのかは目的によって変わります。

谷:谷村さんご自身がオーナーであり、建築士である上で提案してくれているので、安心感がありました。費用面においても、大阪から福知山まで距離があり、交通費が掛かると言われていましたが、他に見積依頼をしていたところより、結果的に価格も抑えてくださってたんです。そこも意外でした。金額的にもそうですし、信頼感というところで工事をお願いしました。

谷村:マンションは屋上で雨漏りしていて、その他にも、あちらこちらで劣化が進んでいたので仮説を立てて、検証しました。周辺環境や風向き、過去の天気予報など一通りデータを集め、施工をしていきました。今回は大きく以下の4つの工事を行いました。

①屋上防水改修工事
②漏水被害のバルコニー防水工事(2階に漏水、301号室のバルコニー防水)
③屋上塔屋壁面漏水修繕工事(602号室に漏水、塔屋修繕)
④室内漏水修繕(301に漏水、401のクーラードレン排水が原因)

301号室の漏水は、401号室のエアコンドレンホース抜けであることが判明した


谷:施工にあたって、現場管理のスタッフがこまめに連絡をくれていたので、こちらが聞かなくても今、何の工事をしているのか、どういう状況になっているのか把握できたので依頼側として非常に助かりました。工事を進めてもらうにあたり、雨漏りではない漏水があるなど手が掛かり、大変でしたね。

谷村:中でも④の「室内漏水修繕」が複雑でした。301号室の押入れで水漏れが発生していましたが、その箇所の上階に水回り設備はありません。水漏れが発生したときの状況をヒアリングすると、401号室の入居者がエアコンをONにしたときに、漏水することが判明しました。ドレンホースが外れていて、抜けていることを確認し、エアコンの水がそのまま壁を伝って床下の貫通部から漏れた可能性があり、 内部の配管による漏水と推測しました。さらに調査を進めてみると、屋根の中のスラブにエアコンのホースが貫通していることが分かりました。こんなケースは稀で手強かったですが、こんな風に1つずつ調査していくと、原因が突き止められます。

谷:今では完全に止まっているので大助かりです。やはり依頼して良かったですし、レスポンスとか、やり取りのストレスのなさは、仕事とする上で大事だなと改めて感じました。思うところを理解してくれたので非常にやりやすかったです。

「家主の会」醍醐味は共有・共感

難波御堂筋ビルディングで行われた「元気が出る大家祭」の様子

谷村:コミュニケーションは基本ですからね。結局、工事でも何でも、根本的に考えられる人を作っていった方が世の役に立てる人を作るってことにもなるんですね。会社ではスタッフに課題図書を出したり基礎リテラシーを身につけたりと内部教育に力を入れ、建築業の将来のことも考えながら動いています。谷さんは「元気が出る大家の会」を主宰されていますが、どのような動機でスタートされたのですか。

谷さん主催の「不動産事業セミナー」at大阪梅田スカイビル

谷:そもそも会を作ろうというより、自分の行動を継続させるために、同志と楽しもうという緩い感じで作ったんです。それがどんどん広がっていて350人超の会になりました。同じ価値観を共有できる人の集まりですが、コミュニティなので、サークル活動のように目標は十人十色です。しかし、情報やその場を共有・共感して喜びを感じられるのが醍醐味かなと思っています。

谷村:チームは目的があり、それに対して全員が向かっていく集団である一方、コミュニティは結局集まってる1人1人がコンテンツで、全体がボトムアップされていくイメージで、逆に、イノベーションが生まれやすいのかもしれません。チームとコミュニティが合わさることで、渦を作り、社会に価値を提供できるんだと確信しています。勇往邁進し、取り組んでいきます。本日はどうもありがとうございました。

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プロフィール

谷弦樹(げんき)オーナー

京都府出身。1985年生まれ。一男二女の父親で5人暮らし。FP2級、宅地建物取引士。
消防士時代、妻を代表にした法人を立ち上げ、2015年9月から不動産事業を開始。21年3月、専業大家となる。現在11棟195戸(戸建て6戸、倉庫1棟、太陽光35kw含む) 所有。借入総額8億4,000万円 満室想定年収1億2,000万円 家賃―返済後の年間手残り約6,000万円 返済比率50%。「元気が出る大家の会」を主宰。「バーニング大家」として健美家などで執筆している。保有資格:宅建士、ファイナンシャルプランナー

ミツケン 谷村社長

八尾市出身、富田林市育ちの1977年2月生まれ。一男二女の大黒柱。
株式会社ミツケンの代表を務め、木造3棟、区分1室の家主としても活動している。
保有資格:二級建築士、一級施工管理技士、CPM
所属する大家の会:元気が出る大家の会、CGS、PIC、がんばる大家の会、ドリーム家主倶楽部、不動産経営研究会ほか

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